墨東病院事件を2度と起こさないために
このグラフをご覧ください。
赤と黄と緑に色分けしてあります。左から右へ、が変化です。
一昨年の秋、都立墨東病院で重症妊婦を複数の病院が受け入れ拒否した問題に対処するため、僕が座長になって「周産期医療体制整備プロジェクトチーム」(PT)を立ち上げました。妊婦が死亡するという事件はなぜ起きたのか、検証するためです。
新生児集中治療室(NICU)には透明なアクリルの容器があります。未熟児などがそのNICUで治療を受けます。5カ月や6カ月で生れた未熟児は掌にのるぐらい小さい。緊急に帝王切開しなければならないケースでも、NICUがあれば命が助かります。しかし、NICUは満床になりやすい。数が不足しているからです。満床であれば、受け入れられない、と断るケースも出てくる。
NICUはなぜ足りないか。そこで収支計算をしてみたのです。高速道路の収支率を一本、一本、分析したときと同じやり方です。新生児と母体を救命する病院の収支モデル分析をして、NICU1床を運営するコストを算出した。
大きな病院には透明な容器が12床ぐらいあります。部屋も無菌室で、かなり余裕がなければなりません。では透明な容器をひとつ設置するためにどのくらいのコストがかかるか。アクリルの容器が1つ、1年間で幾らで回っているか。医師や看護師の人件費、機器の購入費や運営費、薬品代、スペースのコスト(病院の建設費)などをインプットすると1床を運営するごとに病院は年間4174万円かかる。
それに対して診療報酬は3315万円。都と国の補助金は57万円ずつ。745 万円分は赤字で病院側の負担となる。
いちばん左の図。
NICUを運営するだけこれだけ赤字が増えるなら、病院はNICU増床をしたがらない。当然です。
厚労省は出生数1 万人あたり20床というNICUの整備方針を見直し、出生数1 万人あたり25~30床を目標とする、という方針を打ち出しているのに、病院に対してそのための補助金を増やそうとしなかった。
だからPTの報告書では「診療報酬を実態に合わせて大幅に引き上げること」と同時に、「補助金を充実させる」ことで、周産期センターにNICUを増床するインセンティブを与えることを提言したのです。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kyuukyuu/syuusanki/index.html
PTの提言を受けて、厚労省は昨年10月、概算要求でこの補助金を2010年度予算から引き上げ、国が176 万円に引き上げる案を示した。都もこれと同じく引き上げて176 万円とすれば、赤字額を507 万円に減らせるから。
黄色の部分を増やして、赤色の部分を減らそうとした。それが左から2番目の図です。
しかし、その補助金が昨年11月の事業仕分けで大幅にカットされた。
左から3番目の図。たった1時間の議論で。とんでもない話だ。
ただし増えた分に対して半分ですから、当初よりは赤字幅は少ないが。
(このあたりの経緯については、日経BPネットのコラム「眼からウロコ」に記してあります)。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091116/195526/
2月12日に「中央社会保険医療協議会」が、2010年度の診療報酬改定を答申した。診療報酬分が3315万円から3854万円へと500 万円超ほど増えた。赤字幅は93万円に縮小している。
一番右の図。
こうして一番左から右へ、大きく改善された。問題提起をしてよかった。
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コメント
嬉しいです。
一生懸命考えてくださる方がいらっしゃるだけで心が温まります。
~☆感謝☆~
投稿: いづみ | 2010年2月25日 (木) 01時56分
お亡くなりになられた妊婦のことを思うと、
胸が張り裂けそうな気持ちになります。
また、コストが原因になっていることもよくわかりました。
予算配分も難しい面が多々おありになると思いますが、
よりよい社会のために頑張ってください。
私も会社の仕事で今年から、医療の分野へ進出しています。
少しでも患者様のためになることを行っていきたいと思います。
投稿: 吉川健一 | 2010年2月25日 (木) 16時57分